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無道路地

「無道路地」という減価要因を知っていても、実務で無道路地の評価を見落としているケースが散見されます。ここでは無道路地の見極め方やその時価水準について解説します。

(1)無道路地とは

「無道路地」というと、「道路に接していない土地」と理解している方が多いようですが、正しくは「建物が建てられない土地」のことを指します。道路にまったく接していない土地以外にも、道路に接していても建物が建てられない土地もあります。

このように建物が建てられない土地はいわゆる「接道義務を満たさない宅地」として「無道路地」の中に含まれます。評基通においても、「道路に接しない宅地(接道義務を満たしていない宅地を含む。)をいう」と記載されています(評基通20-3(注1))。

土地の価値は建物の建築の可否によって大きく変わりますので、評価対象地が無道路地かどうかは評価の入口の段階で見極めておかなければなりません。

(2)無道路地を見抜くために知っておくべき「接道義務」

無道路地かどうかを見極めるためには、「接道義務」について理解しておく必要があります。
「接道義務」とは、建築基準法その他の法令、条例等において規定されている建築物を建築するために必要な道路に接すべき最小限の間口距離の要件のことです。

都市計画区域内及び準都市計画区域内では、「建築物の敷地は、道路に2メートル以上接しなければならない」とされています(建築基準法第41の2、43)。

逆にいえば、都市計画区域外なら道路に接していない土地でも建物が建てられるということです。したがって、都市計画区域外では無道路地という概念がありません。

この接道義務は、都道府県、市町村等の条例で独自に規定されている場合もあるので注意が必要です。

例えば、「東京都では接道義務を満たす土地だが、横浜市では満たさない土地」ということがあるということです。

また、2m以上接道していても、その道路が「建築基準法上の道路」でなければ、接道義務を満たしているとはいいません。

したがって、接道義務を満たすとは、「建築基準法上の道路に2m以上接している」ということになります。

つまり、「道」に接していて現実にそこに建っている建物にこの「道」から出入りしていたとしても、その「道」が建築基準法上の道路でなければ、その建物は建替えできない無道路地、ということになります。

しかし、この規定にも建築基準法第43条1項但し書きのような例外的に建物建築を認める許可制度があります。

建築基準法第43条1項

(敷地等と道路との関係)
第四十三条 建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。

ただし、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては、この限りでない。

一 自動車のみの交通の用に供する道路

二 高架の道路その他の道路であつて自動車の沿道への出入りができない構造のものとして政令で定める基準に該当するもの(第四十四条第一項第三号において「特定高架道路等」という。)で、地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域のうち都市計画法第十二条の十一の規定により建築物その他の工作物の敷地として併せて利用すべき区域として定められている区域に限る。同号において同じ。)内のもの

国土交通省令(建築基準法施行規則第10条の2)

 法第43条第1項ただし書の国土交通省令で定める基準は、次の各号のいずれかに掲げるものとする。

一  その敷地の周囲に公園、緑地、広場等広い空地を有すること。

二  その敷地が農道その他これに類する公共の用に供する道(幅員4メートル以上のものに限る。)に2メートル以上接すること。

三  その敷地が、その建築物の用途、規模、位置及び構造に応じ、避難及び通行の安全等の目的を達するために十分な幅員を有する通路であって、道路に通ずるものに有効に接すること。

つまり、接道義務を満たさなくても、敷地の周囲に公園等の広い空地があるといった一定の基準を満たせば、建築審査会の同意のもと建築の「許可」が得られる、ということです。

そして、このような建築基準法第43条第1項但し書きの運用にあたって、各行政が許可要件を定めているケースが多く見受けられます。

全国的に見て、人口密度の高い地域は許可要件が厳しく、逆に人口密度の低い地域は許可要件が「緩い」ように感じます。

評価対象地が建築基準法上の道路に接していない場合であっても、許可要件を満たすことができる可能性が高ければ、無道路地としての評価ではなく、通常評価となります。

逆に許可要件を満たすことが現実的に困難(例えば隣地の一部を買収する等)であれば無道路地として評価します。

 したがって、評価対象地が接道義務を満たさない場合であっても、もう一歩踏み込んで「43条1項の但し書きの許可は得られますか?」と役所窓口で確認することが必要です。

(3)都道府県・市町村の条例によって異なる接道義務要件

例えば東京都では「東京都建築安全条例」によって、接道義務を下図のように規定しています。

東京都建築安全条例での接道義務

「評価対象地は2m以上道路に接しているから無道路地ではない」などと早合点せず、通路部分の延長距離との関係で、「何m接道が必要か」を役所で調査する必要があります。

また、都道府県で接道要件を定めている場合がありますので、必ず確認しましょう。

【東京都の場合】東京都建築安全条例第3条(路地状敷地の形態)

 路地状部分の長さ 幅員
 20m以下のもの 2m以上
 20mを超えるもの 3m以上

 

【横浜市の場合】 横浜市建築基準条例第4条 (敷地の形態)

 路地状部分の長さ 幅員
 15m以下のもの 2m以上
 15mを超え25m以下のもの 3m以上
 25mを超えるもの 4m以上

 

【埼玉県の場合】埼玉県建築基準法施行条例第3条(路地状の敷地)

 路地状部分の長さ 路地状部分の幅員
 10m未満 2m以上
 10m以上15m未満 2.5m以上
 15m以上20m未満 3m以上
 20m以上 4m以上

なお、同じ土地であってもその土地が所在する都道府県によって、無道路地になる場合とならない場合があることに留意してください。

例えば、次の図のような路地状部分の長さが18m、幅員が2mの土地の場合、横浜市と埼玉県では接道義務を満たさない土地ですが、東京都では正反対に接道義務を満たす土地です。

(4)無道路地の具体例

具体的に無道路地とは、以下の図のような土地をいいます。

無道路地というと直感的にAのケースを思い浮かべると思いますが、B、C、Dのように道路には接しているものの、接道義務を満たさない場合も無道路地になるということに留意しましょう。

B、C、Dのような土地の場合は、直径2mの「球」を転がすことを想像してみて下さい。

この空想の「球」を道路から転がして建物敷地部分に到達させることができれば無道路地ではありません。

逆に、道路から建物敷地までの間のどこかで、この「球」が止まってしまったら、その土地は無道路地という判断ができます。

また、Eのケースのように現地では物理的に道路に接しているように見えても、建築基準法上の道路には接していない場合も無道路地となります。

さらに、F、Gのケースのように道路には接しているものの、その道路が建築基準法上の道路でない場合、または建築基準法上の道路の部分に2m以上接していない場合も無道路地となります。

B、C、Dのケースは現地でメジャー計測すればその場で無道路地かどうかは判断できますが、E、F、Gのケースは現地では判断がつきません。

役所で調査を行うことで無道路地かどうかの最終判断ができますので、必ず役所で調査を行うようにしましょう。

(5)財産評価基本通達の記載内容

無道路地について評基通では20-3に以下のように記載されています。

無道路地の評価

20-3 無道路地の価額は、実際に利用している路線の路線価に基づき20(不整形地の評価)又は前項の定めによって計算した価額からその価額の100分の40の範囲内において相当と認める金額を控除した価額によって評価する。

この場合において、100分の40の範囲内において相当と認める金額は、無道路地について建築基準法その他の法令において規定されている建築物を建築するために必要な道路に接すべき最小限の間口距離の要件(以下「接道義務」という。)に基づき最小限度の通路を開設する場合のその通路に相当する部分の価額(路線価に地積を乗じた価額)とする。

(注)
1 無道路地とは、道路に接しない宅地(接道義務を満たしていない宅地を含む。)をいう。

2 20(不整形地の評価)の定めにより、付表5「不整形地補正率表」の(注)3の計算をするに当たっては、無道路地が接道義務に基づく最小限度の間口距離を有するものとして間口狭小補正率を適用する。

無道路地の市場価値は、相場の概ね3割程度というのが全国的な平均値ではないかと思います。

具体的にいいますと、大都市圏の地価の高いエリアでは相場の4割から5割程度ですが、少し郊外に行くと3割程度、相対的に地価の低い地方圏では、1割から2割程度です。

過疎化が顕著なエリアは5%程度、つまり相場の20分の1程度の価格しかつかないエリアもあります。

財産評価基本通達にしたがった評価額は、上記の相場が算出される場合もありますが、概ね時価相場よりも高い評価額が算出される傾向にあります。

全く道路に接していない無道路地も、2m未満でしか接道していない無道路地も、いずれの場合も評基通に従った評価額は時価よりも高くなる可能性があります。

他に減価要因がなければ評基通の中ではこれ以上、時価に近付けることはできません。

したがって適正な時価を申告時の評価額としたいのであれば、費用対効果を確認の上、不動産鑑定士による鑑定評価を採用することも視野に入れる必要があるといえます。

(6)無道路地の適正な価値とは

建物が建てられない土地は、建物が建てられる土地よりも価値が低いといえます。

それでは全く価値がないのかというとそのようなことはなく、資材置き場やコンテナ置き場に利用できます。

また、車両が入っていければ駐車場としても使用でき収益を生み出すことも可能です。

しかしながら、建物が建てられない土地はやはり利用価値が相対的に低いといえます。

したがって、評基通の記載内容に従った評価額の1㎡当たりの単価が、路線価÷0.8で算出した公示価格ベースの単価の10%~50%程度に収まっているかを必ず検証し、時価よりも大幅に高い評価額で申告しないよう留意しましょう。

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