市街地山林

評価上の判断も難しく、かつ相談も多い「市街地山林」。広大地判定、純山林としての評価、時価との乖離、固定資産税評価上の介在山林、固定資産税評価額との乖離など評価上非常に悩ましいですね。

市街地山林の評価はなぜ悩ましいのか

市街地山林とは、宅地のうちに介在する山林、市街化区域内にある山林などを言います。
この市街地山林の評価が悩ましいのはなぜか?
結論から先にいいますと、路線価評価と時価の乖離が大きいことが多いからです。
市街地山林の評価は、財産評価基本通達45、49に規定されている通り、宅地比準方式または倍率方式で算出します。


例えば自宅の裏の竹林などは、平坦地であれば伐採して整地後すぐに宅地として使えますから、この計算式でもまあ時価とそれほど乖離はないでしょう。
しかしこの方法で評価した場合、「え!?そんなに価値あるの?」というくらい高い評価額になる場合があります。それは次のような場合です。

① 面積の広い山林
② 傾斜の著しい山林
③ 前面道路が建築基準法上の道路でない山林
④ 前面道路が狭く車でたどりつけないような山林

※「介在山林」とは
「介在山林」は固定資産税評価での分類地目のひとつです。市街地山林を評価する場合、固定資産評価額の地目の欄に書かれていることが多いです。イメージとしては住宅地や農地の中に存する、傾斜のある林や平坦地の竹林などです。財産評価基本通達での、相続税・贈与税における山林の種類は、純山林、中間山林、市街地山林(広大な市街地山林を含む)の3つであり、「介在山林」という種類はなく、評価方法も規定されていません。従って、あくまでも基本通達の3つの分類に従って、現況の状態に応じて評価することになります。


具体的事例

それではこのような山林の場合、どう対処すればよいのか具体的にみていきましょう。

① 面積の広い市街地山林

面積の広い市街地山林は、路線価で計算すると億を超えるケースが多いです。
しかし時価という面から考えると異常に高い金額と言えます。いまどき住宅地周辺で数億円を出して山を山として買う人がいるでしょうか?山を宅地の素地として買う人(業者)はいるかもしれませんが、それでも億を超える金額では買わないでしょう。業者も今はできるだけ手間や費用のかからない小ぶりな土地で開発したがっていますから。

ここで「面積が広い」というのは、おおむね三大都市圏の市街化区域では500㎡以上、それ以外の市街化区域では1,000㎡以上と思って下さい。つまり、「広大地」の面積基準と同じと考えればよいです。

この場合、広大地の要件を満たせば、広大地評価できます。つまり「路線価×広大地補正率×地積」です。そうすると評価額が大幅に下がります。ただし、広大地補正率は造成費も考慮されていると考えられるため、造成費を別途控除することはできません。なお、広大地評価より時価の方が低い場合もありますので、その場合には鑑定評価による時価を採用するとよいでしょう。


② 傾斜の著しい山林(急傾斜地)

通常、急傾斜地というのは斜度が30度超の傾斜地のことを言います。傾斜が著しいということは、平坦な宅地にするのに莫大な造成費がかかるということです。

造成費に関しては下図のように倍率表で㎡単価が規定されていますが、なぜか20度までしか規定されていません。例えば東京都の場合、30度の傾斜があっても、控除できるのは33,500円/㎡(平成23年度)です。
これでは、十分な減価とはいえません。だから時価と乖離するのです。

このような急傾斜地は広大地評価でも造成費を控除できないため、減価しきれません。つまり広大地評価でもまだ時価よりも高いのです。

【傾斜地の宅地造成費】 (出所)平成23年分各管轄国税局HP財産評価基準書より)
傾斜度 金額(円/㎡)
北海道 福島県
宮城県
山形県
秋田県
岩手県
青森県
埼玉県
栃木県
茨城県
群馬県
長野県
新潟県
東京都
千葉県
神奈川県
山梨県
富山県
福井県
静岡県
愛知県
岐阜県
三重県
3度超 5度以下 8,400 8,400 8,500 8,900 8,900 8,800
5度超 10度以下 14,600 14,500 14,500 15,300 15,300 15,200
10度超 15度以下 20,500 20,300 20,200 21,200 21,300 21,000
15度超 20度以下 31,100 31,100 32,600 33,500 34,100 33,800

傾斜度 金額(円/㎡)
滋賀県
和歌山県
奈良県
京都府
大阪府
兵庫県
岡山県
鳥取県
島根県
広島県
山口県
香川県
徳島県
愛媛県
高知県
福岡県
佐賀県
長崎県
大分県
熊本県
宮崎県
鹿児島県
沖縄県
3度超 5度以下 8,900 8,800 8,800 8,400 7,800 9,000
5度超 10度以下 15,300 14,600 14,600 14,400 13,500 15,500
10度超 15度以下 21,200 20,500 20,500 20,100 18,900 21,600
15度超 20度以下 33,600 31,100 31,100 31,900 30,700 33,900
(出所)平成23年分各管轄国税局HP財産評価基準書より


この場合、「市街地山林について宅地への転用が見込めないと認められる場合には、その山林の価額は、近隣の純山林の価額に比準して評価する。」(財産評価基本通達49)という規定に従い、「純山林」として評価するのが最も評価額が低くなります。つまり、「近傍純山林の㎡単価 × 倍率 × 地積」で評価します。

なお、「宅地への転用が見込めない」場合とは、宅地の価格を造成費が上回る場合、もしくは物理的に宅地造成が不可能な場合の2パターンあります。いずれの場合でも純山林として評価するにはそれなりの根拠を示さなければなりませんので、そのようなケースであれば一度ご相談下さい。


③ 前面道路が建築基準法上の道路でない山林

対象山林の前面道路が建築基準法上の道路でなくても、路線価が付されている場合があります。
しかもほとんどの場合、「建築基準法上の道路でない」という減価要因が織り込まれていない路線価です。
ですからそのまま路線価評価してしまうと時価より大幅に高くなります。
路線価が付されていない場合でも、特定路線価による評価でなく、無道路地、広大地、純山林、鑑定評価による時価のいずれかのうち、要件を満たすもので最も評価額が低くなるものを採用すればよいでしょう。
(特定路線価は高く設定される場合が多いので)


④ 前面道路が狭く車でたどりつけないような山林

対象山林の前面道路は建築基準法上の道路であり、路線価も付されているが、幅員が極端に狭い場合があります。けもの道のような道路にしか接していない山林です。
このような場合も路線価評価は時価より高くなりますので、広大地、純山林、鑑定評価による時価のいずれかのうち、要件を満たすもので最も評価額が低くなるものを採用すればよいでしょう。


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